アンティーク　イカット　祭儀用腰布　「タピス」　19c末〜20c初　金糸刺繍　インドネシア スマトラ島 ランプン　検 古布 更紗 バティック

　スマトラ島南部の貴重な布が続きます。高温多湿のインドネシアでは、100年以上も前の古い染織は本当に残っていないものです。この布も今ではもう手に入れることが難しいでしょう。特にこの布は、インドネシア染織の中では、最も数少ない布です。その理由は、庶民が日常着用した布ではなく、支配階級の祭儀用衣装であったためです。高い技術により素晴らしい仕事がなされており、状態も良いのでコレクターの方に持っていただきたい一枚です。

　これは、インドネシア スマトラ島南部 ランプン地方の「タピス」という儀礼用布で、19世紀末から20世紀ごく初頭にかけての古布であることを保証します。族長夫人が儀式の際、身に付けた衣装でした。「インドネシア染織体系」巻末の解説には、「タピスは、ランプン族の代表的な染織で20世紀初頭に衰退し、散逸し数少ないため、祭儀の度に貸借している」とあり、この本が書かれた1978年時点でそういう現状ですので、現在では出会うことができないのも納得がいきます。

　大きさは、縦約113㎝×横110㎝、元は真ん中から筒状に縫い合わされていた筒状の腰巻が開かれたものです。生地の素材は木綿と絹で、天然染料で染められています。横8列に渡って金糸と金属による円盤、雲母片によるミラーワークにより精緻な刺繍がなされています。各刺繍部分の4〜7枚目画像をご覧ください。拡大して見るとよく分かりますが、金糸や木綿糸を朱色の糸で固定しながら様々な形状の刺繍をし、その中に金属円盤や光る雲母片を一つずつ縫い付けられています。気の遠くなるような緻密な仕事です。四角やS字型の赤色や黄緑色の布は、当時の現地には存在しない生地（フェルトのようです）で、海外から輸入されたとても高価な生地でした。

　同手のタピスが、東京国立博物館に所蔵（8枚目画像参照）されています。図録では横向きになっていますが、1枚目画像が着用時の正しい向きです。また、33年前の専門書（9枚目画像）にも、同手のタピスがありましたので、その解説と併せてご覧ください。

　タピスは織られなくなってから儀式の度に村々の間で貸借して使用してきたため、通常傷みが激しいものです。しかし、このタピスは、目に付く大きな破れ等の傷みはほとんど無く、かつて持っていたタピスの中でも、大変良い状態です。ただ、100年以上経た布ですので、汚れや糸の摩耗、円盤等が剥離している部分が見られますので、それらも、長い時を経て大切にされてきた本物の布の証ととらえ、古布にご理解のある方のみ、ご入札をお願いいたします。後世の下手な補修が入っておらず、良い布だと思います。タピスは貴重な染織ですので20世紀後半には既に複製が作られていますが、この布は古いオリジナルであることを保証します。現在では、このようなタピスを作る技術はもうありません。この布の希少さを考えると大変リーズナブルかと思います。お好きな方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。

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